【少年少女の戦い】せめて、やさしいゆめを


 依頼そのものは成功でしたが、私にとっては失敗も同然でした。


 追い返せれば十分、傷つけまいとした狼たちを、先に「粘り蜘蛛糸」を使ったがために、説得の機会を失いました。
 また一連の依頼の中心人物である少年少女に対して、軽々しく過去の事件を持ち出してしまったがために、激しくなじられることになってしまいました。


 もし依頼が失敗していたら、それは全て私の責任でしょう。


 他人の気持ちに気づき、理解しようとすること。


 本気で「一人でも多くの人を、悲しみや苦しみから守りたい」と思っているなら、このことの難しさをもっと認識し、しかるべき行動を取ったことでしょう。


 冒険者になって1年が経ち、レベルは高い水準に達しました。
 しかし私にはまだ、何もかも足りません。